魔 王 「目覚めたら無職になってた」

魔王が長い眠りから目を覚ますと、そこは平和な世界になっていた。
魔王城には一匹のスライムだけが残っており、無職となった魔王は途方に暮れてしまうのだった。

魔王はスライムを伴って街へと向かうが、そこでは人と魔物が一緒に生活していたのだった。



1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:21:05.36 ID:IMw/+yyE0

魔 王 「マジかよ」

ID:wu5DYRwI0

4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:24:48.98 ID:wu5DYRwI0

>>1
代行ありがとうございました!

スライム「魔王様が最終覚醒のため眠っていた間に、側近がクーデターを図りまして」

魔 王 「......声が甲高いから聞きづらいな」

スライム「そのまま魔王様を封印させちゃったんです。それから(中略)我が軍は勇者に倒されました」

魔 王 「それで誰もいないのか......」

スライム「僕達は弱いので勇者にも見逃されて、今に至ってます」

魔 王 「そうか......で、勇者っつか人間今どうしてる?」

スライム「魔族の生き残りと一緒に暮らすようになって、新しい世界を作ってます」

魔 王 「マジで? え、あいつら人間と一緒に暮らしちゃってんの?」

スライム「そうですよ。だって、魔王様の支配が解けちゃいましたから」

魔 王 「......とりあえず、今の世界がどうなってんのか知りたいな」

スライム「じゃあ、このあたりで一番の街に行きましょうか」

5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:28:33.16 ID:wu5DYRwI0

<街>
魔 王 「すっ、すげえ! 建物でけえ! 人多い!」

スライム「大都市ですからね」

魔 王 「おい、獣人とか普通に人間と歩いてるじゃねーか! 嫌ってる奴多かったのに」

スライム「そういう人たちもまだ残ってますよ」

魔 王 「なぁ......もしかして、人間共をどうにかしてやろうとか考えてる奴って」

スライム「いないんじゃないですか。もうそういう次元じゃないというか」

魔 王 「......」

スライム「そう落ち込まないでくださいよ」

魔 王 「いや......何か俺、自分の存在意義がわからなくなったわ」

スライム「魔王様には魔王様の人生がありますよ」

魔 王 「スライムに励まされた......」

6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:33:43.54 ID:wu5DYRwI0

スライム「ところで、これからどうしましょうか」

魔 王 「そうだなぁ......あそこにある城に行って、王と会ってくるかな」

スライム「それでどうするんです」

魔 王 「決まってんだろ、魔王が生きてたってことを思い知らせるんだよ」

スライム「それでまた人間と戦うんですか? もう配下の魔物もいないのに? 僕みたいな
      スライム一匹と? 正気ですか?」

魔 王 「......お前、結構言うのな」

スライム「こんなこと言うのもなんですけど、今までと違う生き方を模索しましょう」

魔 王 「いや、魔王が就職活動とか何の冗談だって話だろ」

スライム「そこにこだわっていたら、ごはん食べられませんよ」

魔 王 「俺今そんなレベル?」

スライム「せっかく世界滅ぼしかける力があるんだから、それを生かす道を考えましょう」

魔 王 「力なぁ......ん?」

少 年 「......」

7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:38:13.36 ID:wu5DYRwI0

魔 王 「おっおい、今、今勇者歩いてなかったか!?」

スライム「ええ、確かに......でも若すぎるような......しかも格好が違うような」

魔 王 「ちょっと、ついてってみようぜ」

<屋敷>

魔 王 「ここに入ってったよな......」

スライム「大きいお屋敷ですね。お金持ちですかね」

魔 王 「あっおーいそこの人間、さっき入ってったのって誰? ていうかここ何?」

使用人 「ここは勇者様の屋敷だよ。今のお方はご子息だ」

魔 王 「むっ、息子? ってここ勇者の家なの!? うわぁ......」

スライム「世界を救っただけあって、出世したんですね」

魔 王 「どっ、どうする? 入ってみる?」

スライム「入ってどうするんですか」

魔 王 「えーと......」

スライム「......」

8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:43:19.86 ID:wu5DYRwI0

勇 者 「失礼だが、どなたかな」

魔 王 「! あっ、怪しい者じゃなくて、俺はそのう」

スライム「初めまして、この人は魔王様です」

勇 者 「......はぁ」

魔 王 「ネタバレ早いわバカ! ......ていうかこいつ、こんなオッサンだったか?」

勇 者 「すまないが、王に呼ばれているのでな。失礼する」

魔 王 「信じてねえし......しょうがねーな」ザワッ

勇 者 「っ! こっ、このドス黒い魔力......ま、まさか......!?」

魔 王 「やっとわかったか? お前が倒したのはただの側近だ。俺が......」

スライム「寝過ごしてた魔王です」

魔 王 「ねっ、寝てたんじゃねーし!」

勇 者 「......何のつもりだ、魔王」

スライム「無職になったので自分探しを」

魔 王 「おいやめろ」

勇 者 「......」

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:47:54.51 ID:wu5DYRwI0

魔 王 「ま、まあ安心しろ、今更お前をどうこうしようって気はねえから。言う事さえ
     聞いてくれればな」

勇 者 「くっ......」

<王城>

勇 者 「何をするつもりかは知らないが......王には手を出すなよ」

魔 王 「相手がヘタなことしなけりゃな。それよりお前、老けたなぁ......」

勇 者 「当たり前だ、俺だって歳をとる」

スライム「......ところで、勇者について行ってどうするつもりですか? 倒すんですか?」

魔 王 「......こいつ今英雄なんだろ? 倒しちまったら俺世界の敵じゃね」

スライム「魔王ってもともとそういうモノでしょ」

魔 王 「いや......でも......」

スライム「え、もしかして魔王様、何も考えてなかっ」

魔 王 「はい黙れ」

10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:51:49.76 ID:wu5DYRwI0

勇 者 「失礼します。お久しぶりです、王」

 王  「よく来てくれた......後ろの者は?」

勇 者 「ええ、私の護衛です。こう見えても腕利きでして」

 王  「そうか。今日は他でもない、頼みごとがあってな」

勇 者 「頼みごと、とは?」

 王  「北方に住むヴァンパイアがここ最近になり、不穏な動きを見せているのだ。
     周辺住民や旅人などを、次々に襲っているとのこと......その真相を探って欲しい」

勇 者 「......」

 王  「? どうした」

勇 者 「いえ......あの連中ですか。立場的には中立で、人に危害を加えるとは......」

スライム「ヴァンパイアってどんな人達なんです? 魔王様」ごにょごにょ

魔 王 「よくわかんね。覚えてないわ」ごにょごにょ

 王  「以前は世俗との関わりを避け、文字通り隠遁していたのだ。それが魔王が
     討伐されてからというもの、行動を起こすようになった」

勇 者 「なるほど......」

12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 22:53:57.88 ID:wu5DYRwI0

魔 王 「ヴァンパイアか......一応俺魔王だし、頼み込めば......よし」

スライム「...... ?」

 王  「当主の伯爵の元には定期的に使者を遣っているのだが、城の玄関から先に立ち入る
     ことは許されん。だが、英雄であるそなたなら別だと聞いている......頼まれてくれるか?」

勇 者 「わかりました、全力を尽くしましょう」

<街>

魔 王 「おい勇者、俺も一緒についてくことにしたから」

勇 者 「何だと? 魔王を連れ行けるわけがないだろう!」

魔 王 「お前は今、そうやって断れる立場にないわけよ。わかる?」

勇 者 「っ......!」

魔 王 「相手は俺の顔知らねえんだから、大丈夫だってばよ」

スライム「......実のところ、そのヴァンパイアのところに何しに行くんです?」

魔 王 「......何しにっていうか、その、しばらく奴らの所に滞在を......」

スライム「寄生ですか。無職が」

魔 王 「やめろ」

18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 23:07:02.17 ID:wu5DYRwI0

スライム「でも王の話だと、揉め事起きてるみたいですよ」

魔 王 「放っときゃいいだろ? 正体バラしゃ言う事聞くって」

スライム「そうですかねぇ......」

勇 者 「すぐに準備して、出発するぞ。いいか?」

魔 王 「へー、へー」

<ヴァンパイアの城>

伯 爵 「使者に勇者を?」

執 事 「はっ」

伯 爵 「かつての英雄か」

執 事 「如何いたしましょう」

伯 爵 「歳を経ても勇者だ。......丁重にお迎えするように」

執 事 「承知いたしました」

21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 23:15:15.29 ID:wu5DYRwI0

伯 爵 「魔王亡き今......真実をわからせる時がきたのだ。慎重に事を運ばねばな」

執 事 「左様で......」

 姫  「失礼いたします。兄上、お話が」ガチャッ

伯 爵 「姫か。どうした?」

 姫  「近頃我が一族の領域に、かつての魔王配下の者がいるようですが......」

伯 爵 「今は我が僕だ。何もおかしいことはない」

 姫  「それに加え、近隣の人間を襲う同胞もいるようです」

伯 爵 「何が言いたいのかな? 我が妹よ」

 姫  「......ヴァンパイアが覇権主義など、冗談にもなりませんわ」

伯 爵 「......」

 姫  「ごめんなさい、ただの戯言です。気になさらないで」 バタン

伯 爵 「...... お前も何か用か? 弟よ」

執 事 「!」

25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 23:21:11.86 ID:wu5DYRwI0

王 子 「......勇者が来るらしいね」

伯 爵 「王からの使者だと聞いているが。どう思う」

王 子 「大方、僕らの様子を探りにでも来るんだろう。注意は必要かな」

伯 爵 「ところで、魔族が増えたのはお前の仕業か?」

王 子 「兄さんの言うとおりにしているだけさ」

伯 爵 「......まあ良い。それより、妹を頼む」

王 子 「ああ、わかってる」

王 子 「入るよ、姫」ガチャッ

 姫  「王子兄さん」

王 子 「伯爵兄さんに、色々言ってきたそうじゃないか」

 姫  「ええ......」

28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 23:29:30.96 ID:wu5DYRwI0

王 子 「気持ちはわかるけど、信用したらどうだ?」

 姫  「伯爵兄上は変わったわ。魔王が倒されてから、急に......何をしようとしているの?」

王 子 「魔王が倒されれば、人間達が狙うのは......僕らヴァンパイアだ。それを警戒
     してるんだろう」

 姫  「王子兄さんも、本当にそう思っているの?」

王 子 「......何が起きても、僕らが適切に対処する。お前は何も心配しなくていいんだ」

 姫  「そう、できればいいのだけど」

<ヴァンパイアの城周辺の村>

勇 者 「着いたぞ、ここだ」

魔 王 「つか、何で歩きなんだよ......馬車くらい使えよ......足いてえ......」

スライム「瞬間移動の魔法とかないんですか?」

魔 王 「そんな便利なもんあったら、勇者にやられてないわ俺ら」

33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/18(土) 23:39:24.97 ID:wu5DYRwI0

勇 者 「これからここで情報収集するぞ。お前も手伝うんだ」

魔 王 「はぁ!? 何で俺まで!?」

勇 者 「城まではまだ距離があり、道を知っているのは私だけだ。......何か質問は?」

魔 王 「ぐぬぬ」

スライム「こういう経験も、将来の糧になりますよ」

魔 王 「またスライムに励まされた......」

勇 者 「まずは情報収集の基本、酒場だな」

<酒場>

勇 者 「なかなか盛ってるじゃないか」

魔 王 「喉乾いたな。おいそこのハゲ、何か冷たいもんよろしく」

主 人 「......」

魔 王 「シカトすんなよ」キラーン

主 人 「! つ、冷たいものですね、承知しました」

勇 者 「......今お前、何かやったか?」

魔 王 「さあな。それより情報収集しろよ」

35: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/18(土) 23:46:59.60 ID:wu5DYRwI0

勇 者 「こういう時は、周りの会話に聞き耳を立てるのさ」

スライム「へぇ~~」

男 1 「......だ、ずらかった方がいいぜ」

男 2 「......だってんだろ?」

男 1 「そうじゃ......が問題なのよ」

男 2 「先だぁ? 馬鹿言うなって、こんなオイシイ......他に......」

勇 者 「......」

魔 王 「...... あれか、何か美味いもん的な話か」

スライム「やだなぁ魔王様、こんな時に小ボケなんて」

魔 王 「えっ......あ、うん、そうね」

勇 者 「そうか......なぜこんな田舎の酒場が盛ってるのかと思ったら、ここで何か
     高額の仕事があるということだな」

魔 王 「こんな山ん中だぜ? んなことあるのかよ」

36: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/18(土) 23:53:14.10 ID:wu5DYRwI0

勇 者 「どんな仕事かはわからないが、高額というからにはそれなりの代償が付いて
     くるだろう。例えば......」

スライム「ヴァンパイア絡みとか」

勇 者 「そういうことだ」

魔 王 「そうはいうけどさぁ、奴ら一応上位種族だろ? ここにいるカス共でどうにかなる
     相手じゃなくね」

勇 者 「ふむ......」

主 人 「はい、お待ち」

勇 者 「ちょうどよかった、主人、このあたりで何か金になる仕事は無いか?」

主 人 「仕事?」

勇 者 「我々はこういう者なんだが」 チャキッ

主 人 「ああ......」

魔 王 「今の言い方ちょっとカッコいいな......ムカつく」

スライム「魔王様もああいう感じ、できないんですか」

魔 王 「武器ないもんよ......俺」

38: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/18(土) 23:58:48.92 ID:wu5DYRwI0

主 人 「匿名の依頼主からの、危険な仕事でいいならあるぜ」

勇 者 「どんな仕事だ?」

主 人 「モンスター狩りさ。ヴァンパイアの領域でな」

勇 者 「これはまた......」

主 人 「奴らの縄張りにゃ今は見かけなくなった珍しいモンスターが出るんだが、それを
     生け捕りにするんだそうだ。報酬はケタ違いな額が出る」

勇 者 「あそこに珍しいモンスターがいるなんて、聞いたことがないな」

主 人 「ただ......おたくの稼業なら知ってると思うが、ヴァンパイアは強い魔力を持つうえに
     人間に対して容赦がない。領域に立ち入れば十中八九、殺しにかかってくるだろう」

勇 者 「殺されるなら、まだいい方かもな」

主 人 「やる気があるなら紹介してやるが、どうだ?」

勇 者 「やめとくよ。命が惜しいんでね」

主 人 「それが正解だよ、お客さん。......ここだけの話、あそこに行って戻って来られた奴
     なんて一人もいないからな」

勇 者 「......」

40: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:01:58.97 ID:EJwBYAcp0

<店の外>

魔 王 「人間も馬鹿だよな、金につられてホイホイ行くから殺されんだよ」

スライム「結局王の話って、さっきの仕事で来ていた人間がやられただけなんですかね」

勇 者 「まだ結論には早いさ。ヴァンパイアは周辺住民も襲っていると王は仰っていた。
     彼らのことだ、何らかの思惑があるに違いない」

魔 王 「ヴァンパイアの目的ねぇ......」

スライム「魔王様、何気に勇者に協力してますよね。優しいなぁ」

魔 王 「ちっ、違うし! そんなんじゃねーし!」

勇 者 「私の知っているヴァンパイアは、いずれも誇り高い人々だった。無暗に人間を襲う
     ようなことは......」

村 人 「ヴァンパイアだ! ヴァンパイアが出た!」

勇 者 「っ!」

魔 王 「あらら、こんなトコにまで出張してくんの」

スライム「面白そうだし、行きましょうよ」

魔 王 「まあ、ここに残る理由はないからな」

41: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:08:19.00 ID:EJwBYAcp0

<村外れ>

傭兵2 「助けてくれっ、相棒が、相棒がやられたっ!」

勇 者 「ヴァンパイアはどこだ? どこにいる?」

傭兵2 「あ、あそこに」

吸血鬼 「チュー、チュー......」

傭兵1 「う......あ」

勇 者 「! 何てこった、血を」

スライム「あれがヴァンパイアですか。見た目はガーゴイルっぽいですね」

魔 王 「なんかカッコ悪いな」

勇 者 「でやぁっ!」ズシャッ!

吸血鬼 「キェッ!」 バタッ

魔 王 「おー、瞬殺」

45: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:16:02.34 ID:EJwBYAcp0

傭兵2 「おいっ、相棒! 大丈夫か!?」

勇 者 「ダメだっ、近づいちゃいけない! 彼はもう......」

傭兵1 「うぅ......ぐっ、ぐるる......」

傭兵2 「!? めっ、目が赤い!?」

傭兵1 「う......キエェエァァッ!」 タタタタ......

傭兵2 「あっ、相棒! 相棒!」

スライム「あれがヴァンパイアの血の契約ってやつですか」

魔 王 「おお、ああなったらもう治らねえんだってよ。......でもあんな感じ
     だったかなぁ......」

勇 者 「......血の契約は繰り返していくと、相手が徐々に怪物化するようになる。
     こいつはおそらく......元は人間だろう」

傭兵1 「にっ、人間だぁ!?」

勇 者 「ヴァンパイアは本来、こんな風に同胞を増やすようなマネはしないはずだ。
     何かが......起こっているのか?」

47: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:21:44.12 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「お前なんか妙にヴァンパイアに詳しいよな。なんでよ?」

勇 者 「......昔」

魔 王 「あ?」

勇 者 「お前が魔王だった頃、ヴァンパイアと戦ったことがある。それだけさ」

魔 王 「ふぅん......        って今も魔王だよバカ!」

スライム「あの表情からすると......なんかワケありですね」

勇 者 「......」

<宿>

魔 王 「やっと宿か......って勇者と俺相部屋ってどういうことよ」

勇 者 「当たり前だ、私の正体は隠しているんだからな。そしてお前は護衛だ」

魔 王 「めんどくせーから、バラしちまえばいいのに」

スライム「今じゃ有名人だから、色々行動しにくくなるんですよ。きっと」

勇 者 「そんなところだ」

スライム「ほらね」

魔 王 「なんかムカつくなお前ら」

48: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:26:52.02 ID:EJwBYAcp0

女 将 「ちょっと失礼しますよ、荷物が届きましたから、置いときますね」ドサッ

勇 者 「荷物? 魔王、お前何か頼んだのか?」

魔 王 「んなわけねーだろ、お前じゃねーの?」

スライム「僕なわけないでしょ、こんな大きな袋」

勇 者 「じゃあ人違いじゃ...... !」

少 年 「ぷあっ!」

魔 王 「!? ひ、人が出てきた!」
 
スライム「あれ、この子確か......」

勇 者 「ジ、ジュニア!? お前どうしてここに?」

魔 王 「ジュニア? ってどこかで見たような」

スライム「ほら、街で会った......勇者の息子」
  
魔 王 「...... えぇぇぇぇぇぇ!?」

49: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:33:35.90 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「僕も連れてって欲しかったんだ、父さん」

勇 者 「あれほどダメだと言ったろう!? 何て無茶を!」

ジュニア「父さんも昔、無茶で故郷を飛び出したんだろ? それと同じだよ」

勇 者 「まったく...... わかった、ただしもう無茶はするなよ」

ジュニア「うん」

魔 王 「......」

スライム「...... 魔王様、今いいなぁとか思ったでしょ」

魔 王 「ばっ、バッカちげーよ、考えてねーし!」

ジュニア「ねぇ父さん、この人は?」

勇 者 「マオウさんといって、父さんの護衛兼付き人だ。あいさつしなさい」

魔 王 「付き人ってコラ」

ジュニア「あのっ、よろしくお願いします!」

魔 王 「ま、まあよろしくお願いされてやんよ」

51: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:40:30.00 ID:EJwBYAcp0

勇 者 「一緒に来ることは許すが、父さんの言うことは必ず聞くんだ。帰れと言われたら、
     必ず帰ること」

ジュニア「わかった。でもヴァンパイアって、そんなに危険な相手なの?」

勇 者 「......そうだ」

スライム「......」

勇 者 「さあ、今日はもう休むことにしよう。明日は早いからな」

<ヴァンパイアの城>

 姫  「......」

騎 士 「まだ起きておられたのですか」

 姫  「......」

騎 士 「風邪など召されぬうちに......」

 姫  「伯爵兄上は、あの人と同じ道を往こうとしておられるわ」

騎 士 「......」

 姫  「血を集めているんでしょう?......また、繰り返すつもりなのかしら」

騎 士 「私は......私の使命は、姫をお守りすることです」

53: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:45:31.49 ID:EJwBYAcp0

 姫  「伯爵兄上を殺してでも?」

騎 士 「......」

 姫  「...... ごめんなさい、今のは忘れて。でも」

騎 士 「繰り返させません」

 姫  「騎士......」

騎 士 「どんなことになろうとも、お守りします。失礼します」 バタン

騎 士 「...... ! これは王子様」

王 子 「一足遅かったね。なかなか格好いいこと言うじゃないか」

騎 士 「......」

王 子 「妹のことだ、もう感づいているとは思っていた」

騎 士 「伯爵様は、本当に......あれを?」

王 子 「舞台の幕を上げる段階に来ている。......あとは客人を招くだけだ」

騎 士 「勇者......ですか」

王 子 「まだ、妹には秘密にしておくんだ」

騎 士 「はっ......王子様、一つよろしいでしょうか」

54: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:51:54.33 ID:EJwBYAcp0

王 子 「いいよ」

騎 士 「......見張りの者から聞いたのですが、どうやら......城が偵察されているようで」

王 子 「! 何だって?」

騎 士 「余所者の魔族が、我らが領域に紛れ込んでいるようです。我々の支配下ではない者が」

王 子 「......」

騎 士 「魔王亡き今、支配から解かれた者達の動きが活発です。何か察知されたのでは?」

王 子 「その件については僕が何とかしよう。兄さんに余計な心配はかけたくない」

騎 士 「承知いたしました」

<翌日:ヴァンパイアの城前>

勇 者 「さて、城に到着だ」

魔 王 「クソ遠いじゃねーか! 何だこの立地」

ジュニア「それにしても、父さんの言った通りだったね。まだあんなに強いモンスターが
     いるなんて」

勇 者 「油断するなよ。ここにいる以上、いつ何が起きてもおかしくはない」

ジュニア「うん! わかった」

55: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 00:55:57.52 ID:EJwBYAcp0

勇 者 「それと魔王」

魔 王 「なんだよ」

勇 者 「お前は私達の用が済むまで、正体は隠しておくんだぞ」

魔 王 「は?」

勇 者 「勇者が魔王と一緒に来たなんてことがわかれば、相手がどう出てくるかわからない。
     そうなれば、お前も目的どころじゃなくなるはずだ」

魔 王 「......」

スライム「そういえばそうですね。魔王様にタダメシ食わせてる場合じゃ......」

魔 王 「ばっ、バカにすんなよ! そのくらいわかってるぜ!」

勇 者 「それじゃ行くとしよう。王が使者として参上した、勇者と申す! 開門されたい!」

ギギギギギ......

勇 者 「さっ、行くぞ」

57: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:02:40.44 ID:EJwBYAcp0

<城内:謁見の間>

勇 者 「......王からの伝言は以上です。今後も我が国としては領分を侵さず、今まで通りの
     友誼を、と」

伯 爵 「承知いたした。......しかし勇者殿が使者とは、王もお人が悪い」

勇 者 「いえ......平和となった今、私は最早無用の長物です。こうして役目が与えられる
     だけでも幸運かと」

伯 爵 「何を申される、今や世界の英雄でおられるではないか。さあ、今宵は我が城で
     過ごされるが良かろう」

勇 者 「よろしいのですか? 私が......この城に」

伯 爵 「確かに人がこの城へ立ち入るのは禁じられているが、貴公は別だ。......過去のことは
      気になさらなくとも良い」

勇 者 「我が息子も入城を許していただき、感謝の言葉もございません」

伯 爵 「......ところで、そちらの御仁は護衛かな?」

魔 王 「っ!」

59: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:10:22.63 ID:EJwBYAcp0

伯 爵 「そのようなモンスターを連れた護衛とは......得物も見えぬが」

勇 者 「正規の護衛ではなく、私が他所で見込んだ者です。魔法の使い手でして」

伯 爵 「ほう......」

魔 王 「......」だくだくだく

伯 爵 「......護衛の方も部屋を用意させていただこう。では、ご案内を」

メイド 「はい、こちらへどうぞ」

<客 間>

ジュニア「! 父さん、お帰りなさい」

勇 者 「さて、これからが本番だ。手ぶらじゃ帰れないからな」

ジュニア「でもどうするの? 何をどう探ればいいのかわからないよ」

勇 者 「おおよその見当はついている。その証拠を押さえることが出来れば......」

ジュニア「ホント? ねぇ、教えてよ」

勇 者 「ダメだ、晩には宴があるだろう? そこで不自然な態度になったら困る」

60: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:17:04.40 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「大丈夫だよー。信用無いんだから」

勇 者 「それまで城を見学させてもらいなさい。当然、何かあれば父さんに報告しろよ」

ジュニア「うん、わかった」

魔 王 「ああああああ疲れた! まじ疲れた!」

スライム「伯爵いい人ですね。護衛風情に部屋を用意してくれて」

魔 王 「イケメンなのが気に入らんけどね」

スライム「今日一日は勇者の護衛になるとして、明日はどうします?」

魔 王 「そうだなぁ......ま、勇者と一緒に帰ったと見せかけて後ろから登場みたいな」

スライム「そこで正体を明かして、居候させてくれってお願いするんですね」

魔 王 「もう少し表現は考えようよ......」

スライム「宴まで時間ありますけど、どうします?」

魔 王 「暇だし......そのへんブラついてくるか」

スライム「わかりました」

63: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:24:07.62 ID:EJwBYAcp0

<城内>

ジュニア「ヴァンパイアの城って、案外普通なんだなぁ」 トコトコ

ジュニア「もっと怖い感じかと思ったのに......  あれっ?」

??? 「誰か? 誰かいないの?」

ジュニア(あそこの扉......だよな。声が聞こえる)

??? 「そこに誰かいるの? いるなら、この扉を開けて!」

ジュニア「あっ、ちょっ、ちょっと待ってて!」 ガチャッ

??? 「外からカギがかかるなんて......」

ジュニア「あっ......」

??? 「! ゆっ、勇......」

ジュニア「あの、僕はジュニアっていいます。お父さんは王様からの使者で、一緒について来たんです」

 姫  「......」

ジュニア「君?」

64: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:29:14.63 ID:EJwBYAcp0

 姫  「...... 私はこの城の主、伯爵の妹......姫と申します」

ジュニア「そうなんだ。初めまして」

 姫  「もしよろしければ、場内を案内致しますが」

ジュニア「本当? お願いします!」

ジュニア「......じゃあ、凄く歴史のある城なんだね」

 姫  「ヴァンパイアの寿命は、人間のそれを遥かに超えるわ。この城を築いたのも
     ずっと前の主......」

ジュニア「君は、ずっとここにいるの?」

 姫  「ほとんど、外に出たことはないわ」

ジュニア「少しは外に出たことはあるんだ」

 姫  「少し......ね」

ジュニア「僕は父さんに連れられて、色んな所に行ったんだ。でも、ヴァンパイアの城
     なんて初めてだったよ」

 姫  「ジュニア、あなたの......父さんって......」

65: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:35:30.27 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「あっ、マオウさん!」

魔 王 「やべっ、見つかった!」

 姫  「......魔王ですって?」

ジュニア「紹介するね、この人はマオウさんといって、父さんの護衛なんだ」

魔 王 「ままままあ、そんなと、ところかな」

スライム「魔王様落ち着いて」

 姫  「......」

魔 王 (やべーめっちゃ見られてる、見られてる)

 姫  「失礼ですが、どこかでお会いしたことは」

魔 王 「いっ、いや初対面でござる」

 姫  「そう、ですか」

魔 王 「お、俺のことは気にせずどうぞどうぞ」

 姫  「では......」 スタスタ

魔 王 「......    あ、焦ったあああああああ」

67: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:42:27.46 ID:EJwBYAcp0

スライム「......  ござる?」

魔 王 「ごめん、思い切り天然出た」

スライム「それにしてもジュニア君も、隅におけませんね」

魔 王 「あの歳でナンパか」

スライム「姫さん、可愛かったですもんね」

魔 王 「......姫さっき俺見て、会ったことがどうとか言ってたよな?」

スライム「ええ」

魔 王 「俺も、どっかで見たことあるような気すんだよなぁ......ヴァンパイアは記憶に無いんだけどなぁ」

スライム「気のせいですよ、きっと」

魔 王 「そうかなぁ......」

69: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:50:23.85 ID:EJwBYAcp0

<城内:当主の部屋>

伯 爵 「現状はどうなっている?」

執 事 「今少しで、準備が整います」

伯 爵 「そうか」

王 子 「ついに、始まるんだね」

伯 爵 「あるべき姿に戻る......その時が来たか」

執 事 「では」

伯 爵 「うむ......やれ」

吸血鬼 「グルル......」

吸血鬼 「ウゥ......」

執 事 「我らが僕達よ......今こそ、その魂を捧げる時が来た」

70: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 01:58:13.84 ID:EJwBYAcp0

<別の城内>

勇 者 (おかしい......伯爵だけでなく、他のヴァンパイアも消えている......?)

勇 者 「! この気配...... まさかっ!?」

??? 「うわぁっ!!」

勇 者 「ジュニアの声? ジュニアっ!!」

ジュニア「父さん!? こっちだよ父さん、こっち!」

勇 者 「! こっ、これは......」

ジュニア「いきなり、飾りの甲冑が襲ってきたんだ! てやっ!」 ザシュッ

甲 冑 「!」

ジュニア「それに、色んな所からモンスターが......大丈夫!?」

 姫  「え、ええ、私は......  !!」

勇 者 「!」

 姫  「あっ......!」

勇 者 「......君は......」

72: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 02:03:55.81 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「これって城全体が何か......どうしたの?」

勇 者 「......!」

 姫  「......」

ジュニア「父さんったら!」

勇 者 「あ、あぁ......そう、だな」

ジュニア「どうしよう? これって何が起きてるの?」

勇 者 「......目覚めたんだ」

ジュニア「え?」

勇 者 「魔城が目覚めたんだ。早く止めないと......!」

ジュニア「どういうことなの?」

勇 者 「ヴァンパイアが生きる糧とする生き血と、そして数多の魂......それらを
     捧げた時、城が蘇る」

ジュニア「蘇る......?」

 姫  「......この城は生きているの。城が蘇れば潜んでいた魔が解放されて、あれが......」

73: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 02:08:23.81 ID:EJwBYAcp0

勇 者 「......」

ジュニア「あれ......?」

魔 王 「ったくなんなんだこりゃ!? いきなりモンスター共が増えやがって」

ジュニア「あっ、マオウさん」

魔 王 「おージュニア、っていうか全員集合してるじゃんよ」

勇 者 「緊急事態だ。ちょっと厄介なことになった」

魔 王 「厄介って何だ?」

勇 者 「説明は省くが、このままだと大変なことになるんだ」

魔 王 「フーン」

勇 者 「魔王、手を貸し......いや、護衛として私についてくるんだ」

魔 王 「......」

勇 者 「魔王!」

76: ◆1kzjh77Tt. 2011/06/19(日) 02:14:06.06 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「あーちょっと待て! 待て!」

スライム「......どうするんです? 何だか緊急事態ですよ」

魔 王 「......こうなっちまうと、もう勇者と一緒に行動する意味なくね?」

ジュニア「行こうよ、マオウさん!」

スライム「ジュニア君もああ言ってますよ」

魔 王 「うぅ......あいつにはなんか弱いんだよ俺。しょうがねーなぁ」

勇 者 「お前の答えは?」

魔 王 「ついてきゃいいんだろ? わかったよ」

勇 者 「......恩に着る。それじゃ、行くぞ」

<最上階>

伯 爵 「フゥゥゥ......なるほど、これが真のヴァンパイアの力か」

王 子 「凄いね......力が溢れてくる」

執 事 「姫様はご命令どおり、自室にいて頂いております。あとは......」

77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:18:56.21 ID:EJwBYAcp0

伯 爵 「残るは客人だけだ......王子」

王 子 「はい」

伯 爵 「私が出るゆえ、お前はここで準備を」

王 子 「兄さんが行かなくても、他の者が」

伯 爵 「相手は勇者だ。仮にも魔王を倒した相手に、失礼は出来んからな」

王 子 「わかった。でも、何かあったら僕も駆けつけるよ」

<城 内>

ジュニア「"血の洗礼"?」

勇 者 「この魔城を媒介にして、極めて広範囲にヴァンパイアの呪いをかけることが出来る。
     種族を問わず、対象を彼らの僕にしてしまうんだ」

魔 王 「はぁ~......またすげーのが出てきたな」

勇 者 「昔......魔王討伐の旅の途中、私はあるヴァンパイアと剣を交えたことがあった」

 姫  「......」

勇 者 「彼もまた血の洗礼を発動させようと、手当たり次第に人間を襲っていたんだ。でも、
     寸でのところで私が......討伐した」

ジュニア「だから父さん、色々詳しかったんだね」

80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:22:50.27 ID:EJwBYAcp0

勇 者 「しかし、彼は恐るべき強さだった。当時の仲間と僕では太刀打ちできなくて......最後は
     同族のヴァンパイアの手を借りて、ようやく倒すことができた」

ジュニア「父さんもかなわなかったの?」

勇 者 「ああ。この生きた城自体が、彼らの力の源になる......倒すのは容易じゃないぞ」

伯 爵 「その通り」

4 人 「!」

伯 爵 「十分なもてなしが出来ず申し訳ない、勇者殿」

勇 者 「伯爵......!」

 姫  「兄上っ!」

伯 爵 「妹......部屋にいたのではなかったのか」
 
 姫  「血の洗礼は、あらゆる種族に影響します。そうなれば、また......争いが起こることが
     わからないのですか!?」

伯 爵 「それは我らが望むところでもある。そろそろ証明すべきなのだ、真の支配者をな」

 姫  「兄上......!」

魔 王 「......なんだか盛り上がってきたな、話が」

スライム「ここからはやっぱり、戦う流れですかね」

81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:27:25.98 ID:EJwBYAcp0

勇 者 「はぁぁっ!!」ザシュッ!

伯 爵 「ふふっ......」カッ

勇 者 「ぐっ!」

ジュニア「父さん!? でやあっ!」

伯 爵 「まだ幼いな......」

ジュニア「うあっ!」ガシッ!

魔 王 「始まってるし」

勇 者 「くそっ......なんて魔力だ......!」

伯 爵 「思い出すな勇者殿。あの頃は貴公も......」

ジュニア「だあっ!」

伯 爵 「彼のように」ガッ

ジュニア「あぐっ......!」ギリギリギリ

勇 者 「ジュニア!」

伯 爵 「少年だった。そして姫......」

82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:34:49.44 ID:EJwBYAcp0

 姫  「兄上、その少年は!」

伯 爵 「来るのだ、姫。お前はもうそちら側にいてはいけない」

 姫  「......」

勇 者 「させるかっ......くらえっ!」 キュィィィィン!

伯 爵 「ぐっ! 選ばれし者の魔法......これか、父に止めを刺したのは」

魔 王 「父? えっ、勇者ってこいつのオヤジ倒したの?」

勇 者 「あの時共に戦ったあなたが、何故同じ道を歩むのですか!」

伯 爵 「勘違いしてはいけない、私は機を伺っていたのだよ。全ての舞台が整い、そして
      勇者殿、強き力を持った貴公が衰える時を......なっ!」 カッ!

勇 者 「うあぁっ!」

 姫  「っ!」タタッ

伯 爵 「何をしている姫っ! 彼は敵だ。......敵を助けるつもりか」

 姫  「......わかりました」

ジュニア「姫さん......!」

84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:39:51.54 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「どっ、どうする? なんか盛り上がってきたけど!?」

スライム「今は一応護衛ってことですし、戦ったらいいんじゃないですか」

魔 王 「そしたら俺カッコいいかな」

スライム「姫さんの好感度は上が......」

魔 王 「ちょっと待てーい!」

ジュニア「マオウさん!」

伯 爵 「騎士」

騎 士 「ここに」シュタッ

伯 爵 「......やれ」

騎 士 「かしこまりました」ジャキッ

魔 王 「お? やんのか? あ?」

騎 士 「フンッ!」ガッ!

ジュニア「うっ......!」 

勇 者 「! ジュニア、ジュニアッ!」

魔 王 「あらっ?」

85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:43:37.95 ID:EJwBYAcp0

伯 爵 「失神しているだけだ。彼には、我らが同胞となっていただこうか」

勇 者 「くそっ、ジュニ...... !!」 ズンッ!

 姫  「っ......!」

伯 爵 「君ともあろう者が......余所見とは頂けんな」

勇 者 「かはっ......」ポワァァ

伯 爵 「回復魔法か。無駄だ、この城内ではその程度の魔法は消えうせる」

 姫  「...... 勇者っ!」タタッ

勇 者 「ひ......め......」

 姫  「どうして......どうして来たのよ、馬鹿っ!」

勇 者 「ハァ、ハァ......君がいるとわかっていても......うっ!」

 姫  「......こんなに......歳が離れちゃったんだ」

魔 王 「えっ、ど、どういうこと? 知り合い?」

89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:48:47.30 ID:EJwBYAcp0

伯 爵 「もうすぐ逝く君達に教えよう。彼女は純血のヴァンパイアでは......はい」

魔 王 「へ~」

伯 爵 「かつて我が父と、勇者殿が戦った時......彼女は勇者殿の仲間の一員だったのだ」

魔 王 「マジで!」

伯 爵 「だが、父に勝てないと悟った彼女は......勇者殿を守るため自らヴァンパイアとなり、強き魔力を得た」

魔 王 「いい話だな......」

スライム「リアクション豊富ですね魔王様」

伯 爵 「しかし、ヴァンパイアは人とは混じられぬ。姫っ!」

 姫  「......」

伯 爵 「もう一度だけ言おう。我が妹として、こちらへ来い」

 姫  「......」

勇 者 「いっ、行くんだ、姫......!」

91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:52:07.94 ID:EJwBYAcp0

 姫  「......覚悟は出来ています」

伯 爵 「そうか。二人とも、楽にして差し上げろ」

騎 士 「......!!」

 姫  「ごめんなさいね、嫌な役をさせてしまって。あなたに殺されるなら......」

騎 士 「ぐっ......わ、私は......」 ジャキッ

魔 王 「って待て待て! どんだけ俺スルーしてんだよ!」

伯 爵 「......」

魔 王 「シカト......だと......」

スライム「ただの馬鹿って思われてますよ、相手に」

魔 王 「ぐぬぬ......おいそこの!」

騎 士 「私は...... ぐふっ!?」ドガッ!

伯 爵 「!」

 姫  「!」

92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 02:57:12.17 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「ちょっと邪魔。こほん......スライム、俺の生活再建プランは一部変更だ」

スライム「やっちゃうんですか。そうですよね」

魔 王 「城がどうとか何だとか知らんけど、相手してやんよ!」

伯 爵 「ほう......少しは出来るのかな?」

魔 王 「出来るのかってお前......一応元上司ですよ俺」

伯 爵 「何?」

魔 王 「ったく、どいつもこいつも......」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

伯 爵 「!?」

 姫  「この恐ろしい魔力......!? まさかそんな」

魔 王 「世間的には死んでることになってるけどな。俺が......」

スライム「魔王(無職)です」

魔 王 「そのカッコやめろ」

伯 爵 「生きておられたのか、魔王陛下」

魔 王 「まあな。色々あって、お前らを倒すことにしたから」

97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:01:58.18 ID:EJwBYAcp0

伯 爵 「だがもう遅い。呪いはすでに......」

魔 王 「えっ?」

王 子 「......兄さん」バッ

伯 爵 「経過はどうだ?」

王 子 「問題なし、かな。準備は整ったよ」

勇 者 「なっ......」

 姫  「何てことを......!」

伯 爵 「ふふっ......さぁ、これから時代は変わる。再び我らが......」

王 子 「でもね、兄さん」 ザシュッ

伯 爵 「がはぁっ......!?」

一 同 「!?」

伯 爵 「きっ、貴様ぁっ......!!」

王 子 「整ったのは血の洗礼じゃなくて、兄さんを滅する魔法のことなんだ」ぐりゅっ

伯 爵 「ゴフッ!」

魔 王 「うわっ、内臓出したぜ内臓......キモすぎだろ」

100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:08:04.10 ID:EJwBYAcp0

スライム「ていうか魔王様、見せ場取られましたよ」

魔 王 「あっ」

王 子 「色々働いてくれて、兄さんには感謝してるよ。ありがとう。そして......」キュィィィィィン

伯 爵 「王子いいいいいいいい!!」

王 子 「さようなら」カッ!

伯 爵 「......!!」サラサラ......

 姫  「あっ、兄上が......砂に......」

王 子 「兄さんのような人物は、これからの時代にそぐわないのさ。さて」

魔 王 「えーと、何がどうなってんのか......」

王 子 「出てきていいよ」

モンスター 「グルル......」ゾロゾロ

騎 士 「!!」

王 子 「君が言っていた余所者って、彼らのことかい? 騎士」

騎 士 「王子様......あなたは」

王 子 「兄さんのようにおしゃべりをする時間は無い。あぁそうだ」

104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:10:37.58 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「......」

王 子 「彼はもらっていくよ」

勇 者 「ま......待て......」

 姫  「王子兄さんっ!」

王 子 「じゃあね」バッ

モンスタ「グルル......」ヒタヒタ

騎 士 「......魔王陛下、お願いがございます」

魔 王 「んっ? あ、何か言った?」

騎 士 「最上階へ......最上階へ行き、王子を討っていただけますか」

魔 王 「討てって、やっちゃっていいの?」

騎 士 「我らヴァンパイアは他と交わらぬ、誇り高き種族にございます。裏切者は、討たねば
     なりませぬ」 チャキッ

 姫  「騎士......」

騎 士 「このお二人は、私が身命にかえて守りますゆえ」

106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:14:35.07 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「ふっ......わかっ」

 姫  「私も戦う!」

騎 士 「姫」

 姫  「魔法は忘れたわけじゃないわ。それに......守ってくれるんでしょ?」

騎 士 「......わかりました」

 姫  「魔王、私からもお願い。勇者の......息子を守って」

勇 者 「姫......」

魔 王 「おっ、おう」

<最上階>

魔 王 「はぁ、はぁ......階段長すぎだろ......」

スライム「体力落ちてますねー」

魔 王 「あんま運動してないからな......っと、ここか」ギギィィ

執 事 「ほう、これはこれは......」

魔 王 「疲れた......ここが最上階か」

108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:16:52.33 ID:EJwBYAcp0

執 事 「魔王陛下、我々にどのような御用で?」

魔 王 「説明はめんどいから省略するけど、お前ら殺すって御用だ」

執 事 「ふむ。それは困りましたな」

魔 王 「......あの余裕何?」

スライム「魔王様相手でも何とかなりそうな、隠し玉があるんですよ」

執 事 「ならば失礼とは存じますが、陛下。ここで死んでいただきたい」 ズズズズズ

魔 王 「魔力がハンパなく上がってる......!?」

執 事 「今や私は、この城と同一......力は既にあなたを超えているのですよ」

魔 王 「戦う前に教えろよ、王子ってムカつくイケメンどこ行った?」

執 事 「......さぁ」

魔 王 「はい言うと思った!」

執 事 「これからあの方の名は、広く大陸に知れ渡ることになりましょうな。さぁ、始め......  !」

魔 王 「そうだな。さっさと終わらせるか」ゴゴゴゴゴゴ

執 事 「何っ......? これは......!?」

魔 王 「何だよ、かかってこないの?」

109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:20:02.72 ID:EJwBYAcp0

執 事 「馬鹿な......魔王は先代に遥かに劣るのではなかったのか......!?」

魔 王 「だっ、誰だそんなこと言ってた奴ぁ!? 失礼な!」キラーン

執 事 「! ぐっ!?」 

魔 王 「俺より強いんだろ? なら俺の力くらい弾き返せるよな?」

執 事 「ぬぅっ......ぐぅぅぅぅっ!」

魔 王 「......王子どこ行った? 教えれば命は助けてやる......ことを検討する」

執 事 「......お、王子は...... がはっ!」 ブシュゥゥゥゥ

魔 王 「やべ、ちょっと力んじゃった」

スライム「ねぇ魔王様、向こうに隠し階段がありますよ」

<屋 上>

魔 王 「! ここにいたか」

王 子 「お初にお目にかかります、陛下」

魔 王 「......ジュニアどこいった?」

王 子 「勇者殿のご子息ですか。あれほどの逸材は欲しがる声が多くてですね......既に
     ここにはおりませんよ」

111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:22:09.67 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「いねーのかよ......めんどいことになったわー」

王 子 「次は僕がお聞きしましょうか。魔王ともあろうお方が、何故勇者殿とおられるのです?」

魔 王 「なりゆきだ!」
 
王 子 「......なるほど、教える気は無い、と」

魔 王 「えっ」

スライム「いや、ホントになりゆきで......」

王 子 「陛下、あなたには勇者殿を味方する理由は無い筈です。どうです? 僕と共に来て
     いただけませんか」

魔 王 「このへんのモンスター集めて、また人間と戦うってか?」

王 子 「いえいえ、もっと大きな規模の話ですよ。僕はすでに、竜族をはじめとする有力諸侯と
     話を付けてありまして」

魔 王 「はぁ?」

王 子 「人間達と同じように、我々も一致団結しようということです。時には戦いという選択も
     あるでしょうが......真向から対抗する時代じゃないでしょう」

魔 王 「どっちにしろ、世界を征服するとかそんなんだろ? ......飽きないか?」

王 子 「これはこれは、陛下からそのような言葉が聞かれるとは」

113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:24:24.77 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「先代の馬鹿オヤジと違って、世の中見えてんだよ」

王 子 「確認させていただきますが、僕らと共に来る気は......」

魔 王 「......」

スライム「魔王様?」

魔 王 「有力諸侯って......サキュバス入ってたっけ」

スライム「......入ってないでs」

魔 王 「共に行く気無しだ!」

スライム「......」

王 子 「そうです、か。それなら」パチン

スライム「! 魔王様、城の外に」

魔 王 「! 大軍が......」

王 子 「連合軍、といったところでしょうかねぇ? 彼らが陛下と勇者殿御一行のお相手を」

魔 王 「で、お前はどうすんの?」

王 子 「所用がありますので、これで」バッ

魔 王 「逃げたか......」

115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:26:30.13 ID:EJwBYAcp0

スライム「敵に逃げられるし、ジュニア君いないし......しょっぱいですね」

魔 王 「ふっ、お前魔王ナメんなよ? ちゃんと王子とジュニアの居場所はわかってる......あと
     しょっぱいとか言うな」

スライム「ホントですか? どこに?」

魔 王 「あそこあそこ、ほら、向こうの」

スライム「......軍の後ろの方じゃないですか。魔王様空とか飛べないし、どうするんです?」

魔 王 「簡単な話だろ。こうするんだよ」キラーン

スライム「えっ?」

チュドォォォォォォォォォォ............ン

スライム「わっ」

魔 王 「爆発系は絵ヅラが汚ねーなー。モンスターがゴミみたい」

スライム「今ので軍の大半が消し飛びましたよ」

123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:35:27.55 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「次はじゃあ、召喚系で」

キシャアアアアアアアアアア!

魔 王 「おい馬鹿そっちじゃねーよ、その先の......使えねーな、何とかの覇王とか邪気眼ぽい
     異名持ってるクセに」

スライム「魔王様、先代様も手こずった怪物を......気軽に召喚ですか」

魔 王 「よし、よし、そのままそいつらをここに...... うおっ!?」 ドサッ!

ジュニア「......」

王 子 「うっ......」

魔 王 「いつつつ......と、奪還成功」

スライム「アホみたいに強いですね。魔王様」

125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:40:30.37 ID:EJwBYAcp0

王 子 「......ハハ、まさか、陛下がここまでとは」

魔 王 「さて、と。おい、死ぬ準備できたか?」

王 子 「......魔王、あなたは先代とは違い、人に近いお方だと聞いていました」

魔 王 「......」

王 子 「人のように欲望に忠実で、時に愚かしく......そして弱い、と」

魔 王 「魔族って奴は極端だからな。俺はたまたま、極端に人間に近かった、ってことだ」

スライム「......」

王 子 「なるほど......   ......僕も、あなたのようになれたら良かった」

魔 王 「......お前、あの馬鹿の代わりに側近だったらよかったのにな」 キュィィィィィン

王 子 「......ええ、僕もそう思います」

 カッ......!

126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:43:21.96 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「......よし、あとは残ってる奴を片付けるか......ごにょごにょごにょ」

騎 士 「陛下っ!」

魔 王 「あれ? お前ら、下の奴らは?」

騎 士 「いけません、何せ数が多く......」

 姫  「もうすぐここまで上がって来るわ。......王子兄さんは?」

魔 王 「カタ付けたよ。きっちりな」

勇 者 「ジュニア!」

ジュニア「う......」

魔 王 「あれ、アイツ傷治ったの?」

騎 士 「姫様の魔力により......」

 姫  「ジュニア君と勇者は、後ろへ行ってて」

勇 者 「何を言っ......っ!」

騎 士 「まだ動いてはなりません。お任せを」

 姫  「ここで、止める」

勇 者 「くっ......また君に助けられたのか、俺は......!」

127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:45:20.13 ID:EJwBYAcp0

 姫  「......あの時言ったこと、忘れたの?」

勇 者 「姫......」

 姫  「あたし、人間じゃなくなったけど......変わってないよ、今でも。勇者への気持ち、
     その子と会って思い出したんだ」

ジュニア「......」

 姫  「ちゃんと生きて帰って......奥さん、大事にしなきゃね」

勇 者 「くっ......」

魔 王 「ええ話や......」

騎 士 「さて、そろそろ話は止めにしましょうか」 ジャキッ

 姫  「そうね」

魔 王 「あ、言っとくけどもう戦わなくていいぞ」

 姫  「えっ?」

魔 王 「外見てみ」

勇 者 「! 何ということだ......軍に、囲まれている......!」

 姫  「でもちょっと待って、様子がおかしいわ」

128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:47:08.49 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「さっき呪い的なモノかけて、あいつら同士討ちするようにしたから」

騎 士 「っ......!?」

 姫  「こっ、この数に......!?」

魔 王 「城の中の奴も、今頃やり合ってる頃だろ。ほっときゃ自滅する」

騎 士 「しっ、しかし陛下、この城が覚醒した以上は、魔が半永久的に生み出され......」

魔 王 「それなら、こうすればいいんだろ」

 姫  「? なっ、何を?」

魔 王 「この城の力を全部吸い取る」

騎 士 「むっ、無茶です陛下、それは......  !?」 ズズズズズズズズズ

勇 者 「何という魔力の奔流だ......!」

騎 士 「それを、いともたやすく......」

 姫  「これが......魔王の力なの......!?」

魔 王 「......ゲフッ。終わり、と」

一 同 「......」 ポカーン

魔 王 「ん?」

131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:49:05.73 ID:EJwBYAcp0

<その後~王城>

 王  「......彼奴らに、そのような企てがあったとはな。いや、よくやってくれた」

勇 者 「はっ......」

 王  「此度の功績に対し、恩賞を取らそう。何が良い?」

勇 者 「いえ、私は何も、ただ......」

 王  「ただ?」

勇 者 「......あの城には、まだ残ったヴァンパイアがおります。彼らには、これまでどおりの
     友誼を......私が使者を務めますゆえ」

 王  「ふむ。まあ、そなたが言うのであれば問題なかろう」

勇 者 「ありがとうございます」

 王  「ところで、護衛の者はどうした?」

勇 者 「はっ、それが......」

133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:51:23.81 ID:EJwBYAcp0

<街>

スライム「いいんですか? 何かご褒美くれたかもしれないのに」

魔 王 「さすがに魔王としての誇りがあるわけよ、そこには」

スライム「今後の計画も将来性もないのに?」

魔 王 「おいやめろ」

スライム「ところで魔王様、気になることがあるんですけど」

魔 王 「何だよ」

スライム「ジュニア君のことなんですけど。彼、宿に荷物として届いたじゃないですか」

魔 王 「ああ」

スライム「何で僕らがあそこに泊まるってことが、わかってたんですかね?」

魔 王 「事前に聞いてたんだろ」

スライム「でもあの宿、魔王様が決めたんですよ。ここがいいって」

魔 王 「あ」

スライム「しかもあのタイミングで届くとか......変じゃないですか? ずっと行動を
     見てないとわからないですよ」

134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:53:13.35 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「じゃあ何か、誰かが仕組んだみたいな展開かこれ」

スライム「勇者があの村に行くって知ってて、あんなことが出来る人は......」

魔 王 「......王か?」

スライム「...... もしかしたらジュニア君、前から狙われ......」

ジュニア「マオウさん!」

魔 王 「うおっ!? って何だ、お前かよ」

ジュニア「この間はありがとうございました! 助けてくれたんでしょ? スライムさんも」

スライム「いえいえ、僕は何にも」

魔 王 「感謝しろよ? できればその気持ちは具体的に形にしろよ」

スライム「素晴らしい下衆っぷりですね」

ジュニア「さっすが元魔王だね。マオウさん」

魔 王 「まあな......ってお前、俺の正体......」

ジュニア「うん。なんとなく気づいてた」

魔 王 「oh...」

135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:54:58.22 ID:EJwBYAcp0

ジュニア「それでさ、さっきの話だけど」

スライム「聞いてたんですか、ジュニア君」

ジュニア「まあね。二人の言うとおり、僕は王様に届けてもらったんだ」

スライム「やっぱり。個人的に思うんですけど、あの王様、怪しいですよね」

ジュニア「それ正直、僕も思ってた」

魔 王 「お前も?」

ジュニア「何となくだけど......前からあの城、やな雰囲気なんだよね」

魔 王 「嫌な?」

ジュニア「うん。あのヴァンパイアの城に似てるような、そんな感じ」

137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 03:56:19.22 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「......」

ジュニア「......ねえ魔王さん。これから僕らで、旅に出ようよ」

魔 王 「......はぁ?」

ジュニア「決めたんだ。嫌だって言ってもついて行くからね」

魔 王 「いや、また勇者に怒られんぞ?」

ジュニア「平気平気、だってもう話してあるし」

魔 王 「!?」

スライム「あらら」

ジュニア「父さんも思うところがあったらしくて......許してくれた」

スライム「どうします? 魔王様」

魔 王 「どうするったって......」

ジュニア「じゃあ旅の基本として、ここで必要なものを買おうか。大丈夫、お金はあの城から
     もらってきたから」

魔 王 「え、もうそんな話進んでんの?」

スライム「みたい、ですね」

139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/06/19(日) 04:01:32.60 ID:EJwBYAcp0

魔 王 「しょうがねーな......わかった、お前を俺の手下2号に任命してやる」

ジュニア「やった! ありがとう魔王さん!」

スライム「世界を救った英雄の息子なのに......いいのかな?」

ジュニア「じゃ、さっそく行こうか!」 タタッ

魔 王 「おい、とりあえず腹減ったからそのへんで......」

 ねぇ、スライムさん  なんです? なんとなく気づいてたけど......スライムさん、本当はスライムじゃないよね

 ...... 夢で見たんだ。なんか、女の子......   ......まあ、そのうち、に。

 おわりです





転載元: http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1308403265/

前へ

勇者「魔王死ななきゃ俺不死身じゃね?」

次へ

勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな......」